養育費の強制執行について詳しく解説

養育費の強制執行

養育費の強制執行とは?

養育費は、子どもの生活や教育を支えるために欠かせない重要な支払いです。
しかし、相手が養育費を支払わない場合や支払いが遅れることがあります。

こうした未払い問題に対処するための法的な手段が「強制執行」です。

強制執行とは、裁判所を通じて、未払いの養育費を支払うように相手の財産(給与や預金、不動産など)を差し押さえて回収する手続きのことです。

相手が自発的に支払いを行わない場合でも、法的な力を借りて回収を進めることができます。

強制執行に必要な「債務名義」とは?

債務名義について

強制執行をするには、まず「債務名義(さいむめいぎ)」という書類が必要です。

債務名義は、裁判所や公証役場が発行する「養育費を支払うべきだという証明書」のようなもので、これがないと強制的に相手からお金を回収することはできません。

債務名義には次のような種類があります。
  • 調停調書
    家庭裁判所での話し合いで養育費が決まった場合に発行されます。
  • 判決書や審判書
    裁判で養育費の支払いが決まったときに発行される書類です。
  • 公正証書
    公証役場で養育費に関する取り決めを文書にしたものです。

公正証書と「強制執行認諾文言」について

公正証書

特に便利なのが「公正証書」です。
これは、家庭裁判所を経由せずに、公証役場で話し合いに基づいて作成する正式な文書です。

この公正証書に「強制執行認諾文言」を記載しておくことで、裁判を行わずにすぐに強制執行を開始することができるようになります。

強制執行認諾文言とは?

「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」とは、相手が養育費を支払わなかった場合にすぐに強制執行を行えるようにする一文です。

公正証書にこの文言を入れておくと、相手が支払いを怠った際に裁判所に訴えることなく、すぐに相手の給料や預金を差し押さえる手続きを進められます。

強制執行認諾文言の例

「相手方(支払い義務者)は、養育費の支払いが遅れた場合、債権者(養育費を受け取る側)に対して直ちに強制執行を認めます。」


この一文により、支払いが滞ったときに裁判をする手間や時間をかけず、すぐに強制的に相手から養育費を回収できるのです。

強制執行の方法について

養育費の差し押さえ

強制執行には、主に3つの方法があります。
それぞれ、相手の財産(お金や不動産など)を差し押さえて回収します。

給料の差押え

相手が会社に勤めている場合、相手の給料の一部を差し押さえることで、毎月決まった金額を回収できます。

この方法では、会社から相手の給料の一部が直接、養育費として支払われます。
安定した収入がある相手には効果的です。

銀行口座の差押え

相手の銀行口座からお金を差し押さえて回収する方法です。

預金に十分な残高があれば、まとまった金額を一度に回収できることがありますが、残高が少ない場合は全額を回収できないこともあります。

不動産の差押え

相手が家や土地などの不動産を持っている場合、それを差し押さえて売却し、そのお金で養育費を回収する方法です。

ただし、この方法は手続きに時間がかかることが多く、相手が大きな資産を持っている場合に使われることが一般的です。

強制執行のメリットとデメリット

強制執行のメリットとデメリット

強制執行のメリット

  • 確実な回収
    給与や預金など、差押えできる財産があれば、強制的に未払い分を回収できます。
  • 法的な安心感
    裁判所や公証役場が関与しているため、手続きが正式であり、支払い義務者にも圧力がかかるため、支払いが促進されることが期待できます。
  • 公正証書の利便性
    公正証書がある場合、裁判を経ることなく強制執行ができるため、手続きが簡略化され、時間や費用が節約できます。

強制執行のデメリット

  • 相手の財産がない場合、回収できない
    支払い義務者に差押え可能な財産(給与や預金、不動産など)がない場合、強制執行を行っても回収できる金額が限られます。
  • 手続きに時間がかかる
    特に不動産の差押えなどの場合、手続きが長期化し、迅速に養育費を回収できないケースがあります。
  • 費用が発生する
    強制執行には収入印紙代や郵送費、弁護士に依頼する場合には別途費用がかかります。
  • 相手との関係悪化
    強制執行を行うことで、相手との関係がさらに悪化する可能性があります。

養育費の強制執行について弁護士に無料で相談が可能です。
お気軽にご相談下さい。

LINEで弁護士に無料相談