離婚後の養育費はいつまで払ってもらえるの?

離婚後の養育費はいつまで?

もしかして18歳になったら支払いが止まるの?」――2022年に成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられて以降、こんな声が増えました。

昨年、群馬県で高校3年生の息子さんを育てる30代の依頼者から、「元夫が18歳になったら養育費は終わりだと言い出したんです」と震える声で相談を受けたことがあります。

彼女は息子さんの高校卒業目前にして、突然支払いが打ち切られるのではと怯えていました。

あなたも「18歳大人だからもう払ってもらえないの?」と混乱してはいませんか?

弁護士
結論から言えば、養育費は原則として子どもが社会的・経済的に自立するまで支払われます。

日本では従来、子どもが20歳になるまでが支払いの目安とされてきました。

2022年4月の法改正成年が18歳になりましたが、だからといって、養育費の終期が当然に18歳へ繰り上がるわけではありません。

子どもが18歳になっても高校在学中で自活できない未成年なら、養育費の支払い義務は基本的に続くのです。

実際、先述の依頼者の場合も、私が元夫に法律の趣旨を伝え交渉したところ、「高校卒業までは支払う」と納得させることができました。

とはいえ例外もあり、子どもが20歳未満でもすでに就職して十分な収入を得ていれば、親からの養育費は不要と判断される場合もあります。

実のところ高校卒業後すぐ就職したケースでは、18歳や19歳でも支払い終了が認められた例があります。

しかし心配しすぎないでください。

お子さんが在学中で依然生活の援助が必要なら、「未成熟子」(まだ親の扶養下にある子)として扱われる限り支払いは続くのが原則です。

弁護士
法律もあなたのお子さんの自立を見届けるまでは、親の責任を簡単には手放さないよう考慮してくれているのです。

大学進学や障害がある子はどうなる?

高校卒業後、もしお子さんが大学などに進学したら養育費はどうなるのでしょう?

シングルマザーのBさんは離婚時、「とりあえず20歳まで」とだけ取り決めをしました。

ところが数年後、娘さんが大学進学を希望し合格。

卒業まであと4年分の学費と生活費、私ひとりで背負えるかしら…」とBさんは青ざめました。

元夫に延長の相談をしようにも、「約束は20歳までだろう」と取り合ってもらえず、胸が締め付けられる思いだったそうです。

弁護士
大学進学や専門学校進学の場合、養育費の支払い期間を延長できる可能性があります。

実際、離婚協議の際に「子どもが大学を卒業するまで支払う」と定めておく例もありますし、調停22歳(大学卒業相当の年齢)まで延長する取り決めがなされるケースも存在します。

裁判所の判断でも、子どもが既に大学生であれば卒業時まで支払いを命じることがあります。

ただし注意したいのは、事前の取り決めがない場合です。

Bさんのように後から頼もうとしてもうまくいかないこともあります。

元配偶者にとっては予定外の負担となり、「聞いてない」「自分の老後資金が…」と反発されるケースを私も目にしてきました。

将来お子さんが進学希望なら、離婚時にその旨を話し合って明記しておくのが理想でしょう。

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一方で、お子さんに障害がある場合はどうでしょうか。

例えば心身に重度の障害があり、20歳を過ぎても働けないような場合では、親の扶養義務は特に重要になります。

このような場合、話し合いによって20歳を超えても養育費を支払ってもらう合意をすることも可能です。

現に、私の知るケースでは知的障害を持つ息子さんの将来を案じたお母さんが、離婚協議で「一生面倒を見る代わりに可能な限り支援してほしい」と元夫に涙ながらに訴え、子どもの30歳まで月々の支払いを続けてもらう合意を取り付けました。

極端な例かもしれませんが、子どもの自立が難しい事情があれば柔軟に期間を延ばす道もあるのです。

もちろん具体的な年齢や条件はケースバイケースで、双方の経済状況や話し合い次第です。

しかし、「どうせ20歳で打ち切り」と最初から諦める必要はありません。

弁護士
お子さんの将来を見据えて、必要に応じて粘り強く交渉してみてくださいね。

養育費を最後まで受け取るための対策

養育費を最後まで受け取るための対策

ここまで見てきたように、養育費が支払われる期間には様々なパターンがあります。

では、あなたとお子さんが「約束の養育費を最後までしっかり受け取る」ために今できることは何でしょうか。

私自身、現場の失敗談から痛感している「ポイント」をお伝えします。

弁護士
まず何より、養育費の取り決めを明確に交わすことです。

もしまだ離婚前で話し合いの余地があるなら、「子どもが何歳になるまで支払うか」を具体的に取り決めておきましょう。

口約束は絶対に避け、公正証書など法的効力のある書面に残すのがおすすめです。

え、そこまでする必要あるの?」と戸惑う方もいるかもしれません。

しかし現実問題、養育費の取り決めをせず離婚してしまうケースは約6割にも上り、実際に養育費を受け取っている母子家庭は全体の24.3%に過ぎないのです。

これは先進国でも異例の低い水準で、「日本では多くのお母さんが十分な養育費を得られていない」ことを示しています。

裏を返せば、取り決めをきちんと行い法的手続きを踏んだ家庭では、比較的養育費が支払われ続けているとも言えるでしょう。

取り決めと記録は、あなたとお子さんの権利を守る第一歩です。

弁護士
次に、状況の変化に応じて適切に対応する準備も大切です。

例えば、子どもの進路変更相手方の再婚収入変動など、長期間には予想外の出来事が起こります。

そんなときは一人で抱え込まず、遠慮なく専門家や公的機関に相談してください。

家庭裁判所での調停手続きや、養育費の強制執行・保証制度など、困ったときに使える制度は意外とたくさんあります。

実際、私が関わったあるケースでは、元夫が支払いを渋るようになった際、公的な養育費保証サービスを利用して未払い分を確保したお母さんもいました。

こんな手があったのか」と彼女は肩の荷が下りた様子でした。

周囲の支援や制度をフル活用すれば、養育費を守る道はきっと開けます。

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最後に、相手とのコミュニケーションも可能な範囲で大事にしてください。

養育費は本来、子どもの健やかな成長を両親で支えるためのもの。

建前だけでなく、お互いに「子どものためにできることをしよう」という姿勢を持てれば理想的ですよね。

もちろん現実には感情的なしこりもあるでしょうが、冷静に話し合えるほど良い条件を引き出せる可能性も高まります。

私が見てきた中でも、離婚後もしっかり協力関係を築けた元夫婦ほど、子どもが成人するまで安定して養育費が支払われていました。

ありがとう」の一言で相手の態度が軟化することもあります。

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未来あるお子さんのために、大人同士できる努力を少しずつ重ねてみませんか?