養育費の請求は、離婚や別居後の子どもの生活を支える重要な問題です。
しかし、支払い義務を負う親(義務者)が養育費の支払いを滞らせたり、財産状況を明確にしない場合、正当な金額の養育費を受け取ることが困難になることがあります。
このような状況を解消し、養育費の適正な支払いを確保するための手段が「財産開示手続」です。
財産開示手続とは
財産開示手続は、義務者が養育費を支払わない場合や、義務者の財産状況が不明な場合に、その財産状況を明確にするために行われます。
裁判所を通じて義務者に出頭を命じ、給与や預貯金、不動産などの具体的な資産情報を開示させることで、適正な養育費の算定や支払いのための基礎情報が得られます。
この手続は、以下の状況で特に重要です。
養育費の支払いが滞っている場合
未払いが続くとき、義務者の財産状況を確認し、差し押さえや強制執行に向けた対応を取るために不可欠です。
義務者が財産を隠している可能性がある場合
義務者が収入や資産を過少申告している場合、開示手続によって正確な財産情報を把握し、養育費の適正額を確保するために使われます。
2020年民事執行法改正の主な内容
2020年4月に施行された民事執行法の改正は、財産開示手続の強化と、未払い養育費の回収をより確実に行うための新しい手段を提供しました。
財産開示手続の強化
以前は、義務者が財産開示を拒否したり、虚偽の申告をしても効果的な罰則がないことが問題でした。
しかし、改正後は、義務者が正当な理由なく財産開示を拒否した場合や虚偽の申告を行った場合、より厳しい罰則が科されるようになりました。
最悪の場合、懲役刑も課される可能性があり、これにより義務者が財産開示手続きを軽視することが減少すると期待されています。
また、裁判所は、義務者に対して具体的な財産情報(給与、銀行口座、不動産など)の提出を命じることができ、養育費の適正な計算に役立ちます。
第三者からの情報取得制度の導入
改正後、債権者(養育費を請求する側)は、義務者の財産や収入に関する情報を第三者(銀行や雇用主など)から直接取得できるようになりました。
裁判所の許可を得た場合、債権者は金融機関から義務者の預貯金の情報を取得し、雇用主から給与情報を確認できるため、義務者が財産を隠しても、その情報を直接追跡できるようになりました。
これにより、養育費の回収がより確実かつ迅速に行えるようになり、特に養育費の支払い能力があるにもかかわらず支払わないケースで有効です。
不動産の強制執行手続の簡素化
さらに、養育費の未払いが続く場合、義務者の不動産を差し押さえ、競売にかける手続が簡素化されました。
これにより、債権者が義務者の不動産を迅速に処分し、養育費の回収に充てることが可能となっています。
これも、未払い養育費の回収を迅速に進めるための重要な改正点です。
改正の効果と今後の期待
これらの改正により、養育費の未払い問題に対する対策が大幅に強化されました。
特に、第三者からの情報取得制度は、義務者が財産や収入を隠すことを防ぐ有効な手段として機能し、養育費の回収が困難であったケースでも回収が可能となる期待が高まっています。
さらに、罰則の強化によって義務者の不誠実な行動を抑制し、養育費の適切な支払いが促進されることが期待されます。