「養育費」と「婚姻費用」は、離婚や別居に際して家族の生活を支える重要な財政的な支援手段です。
両者は同じように「生活を支えるためのお金」である一方で、その支払い対象や期間、目的において大きく異なります。
養育費とは?
養育費は、親が子どもを育てるために必要な費用を指します。
特に、離婚や別居後、子どもを主に養育している親に対して、もう一方の親がその子どものために支払う金銭を意味します。
養育費には、以下のような費用が含まれます。
- 生活費
子どもの衣食住にかかる費用です。
これには、日常的な食事、衣服、そして住居に関わる経費が含まれます。 - 教育費
子どもの学業にかかる費用も養育費に含まれます。
公立・私立にかかわらず、学校の授業料、教材費、学習塾などの費用を含みます。 - 医療費
子どもが病気になった際の治療費や、健康維持のための予防接種、歯科治療などの医療に関わる支出もカバーします。 - その他の費用
子どもが参加する習い事やクラブ活動の費用、あるいは子どもに必要な交通費など、育児に関連する全般的な支出です。
養育費の支払い期間
一般的に、養育費は子どもが満20歳になるまで支払われますが、高校卒業後に大学進学を希望する場合や、特別な事情がある場合は、その期間が延長されることもあります。
婚姻費用とは?
婚姻費用は、夫婦が別居している期間において、収入が少ない一方の配偶者や子どもを経済的に支えるために、高収入の配偶者が負担する生活費のことです。
婚姻費用は、離婚が成立するまでの間、別居中でも夫婦が互いに生活を支え合う法的義務に基づき支払われます。
婚姻費用に含まれる費用
- 配偶者の生活費
別居している配偶者が生活を続けるために必要な費用です。
衣食住の費用、医療費、交通費などが該当します。 - 子どもの生活費
養育費も婚姻費用に含まれますが、特に別居中の子どもの日常生活費や教育費、医療費などを支援するために使われます。 - 住居費
配偶者や子どもが住むための家賃や住宅ローンの支払いなど、住居関連の費用も婚姻費用に含まれます。
婚姻費用の計算方法
婚姻費用の金額は、夫婦の収入や家族の生活水準、子どもの数などを考慮して決定されます。
家庭裁判所では「婚姻費用算定表」を使用して計算するのが一般的です。
養育費と同様に、この表に基づいて具体的な金額が算定され、支払い義務が生じます。
婚姻費用の支払い期間
婚姻費用は、別居している間に支払われ、離婚が成立するまで続きます。
離婚が成立した場合、婚姻費用の支払いは終了しますが、その後は必要に応じて養育費が支払われます。
チェック 婚姻費用算定表は裁判所の公式サイトで確認可能です。
養育費と婚姻費用の違い
項目 | 養育費 | 婚姻費用 |
---|---|---|
目的 | 子どもの生活費や教育費を支援 | 別居中の配偶者と子どもの生活を支援 |
支払い対象 | 子ども | 配偶者と子ども |
支払い期間 | 子どもが成人または自立するまで | 別居期間中(離婚まで) |
主な用途 | 子どもの衣食住、教育、医療費 | 配偶者の生活費、子どもの養育費、住居費 |
法的義務 | 親が子どもの生活を支える義務 | 夫婦が互いの生活を支える義務 |
婚姻費用の支払い義務は、夫婦間における「相互扶助の義務」に基づいています。
この義務により、夫婦はたとえ別居している場合でも、生活を支え合う責任が求められます。
そのため、収入に差がある場合は、高収入の配偶者が婚姻費用を支払うことになります。